ブッダの旅 丸山勇 岩波新書 ★★★☆☆
インドといえばヒンドゥー教の国というイメージが強いが、インドは仏教発祥の地でもある。
私たちは著しく変容してしまった日本仏教に馴染みすぎているため、そのオリジナルがどのようなものであったかは想像しにくい。
本書は、ブッダが旅した足跡を写真で辿ったものである。
なるほど、仏教を生み出した土地は、インドらしくない、穏やかで美しいところである。三大宗教はすべて西アジアで誕生したが、一神教と多神教の違いは、風土の違いによるものかもしれないと思った。
ブッダが生きていたのは今から2500年も前、ソクラテスや孔子とほぼ同時代である。これほど多くのブッダの遺構が、今日まで残されているとは知らなかった。
四大仏跡とは、ルンビニー(誕生の地、現在はネパール領)、ブッダガヤー(覚醒の地)、サールナート(説法の地)、そしてクシナーガル(涅槃の地)である。
釈迦族の王子シッダールタは29歳のとき妻子を棄てて出家し、6年におよぶ苦行生活を送る。苦行を放棄し、村娘スジャーターより乳粥供養を受けて体力を回復したシッダールタは、悟りの場を求めて前正覚山(プラーグボーディー山)に赴く。そして、菩提樹の下でついに悟りを開き、ブッダ(「目覚めた人」)となるのである。35歳のときであった。
仏教教団の礎を築いたブッダは、マガダ国の首都ラージギル(王舎城)の竹林精舎や、コーサラ国の首都シュラーヴァスティー(舎衛城)の祇園精舎に滞在し、説法を行ったという。
平家物語の冒頭、「祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響あり・・・」の「祇園精舎」とはこのことであったのか。ちなみに、実際は祇園精舎に鐘はなかったらしい。
(18/03/02読了 18/06/01更新)