時をかける少女 筒井康隆 角川文庫 ★★★☆☆
アニメ版が意外に面白かったので、原作が気になって読んでみた。
誰もが知っているこの「時をかける少女」という作品だが、原作は、学研の「中学三年コース」と「高校一年コース」に1965年から1966年にかけて掲載されたものである。もう半世紀も前のことだから、古典といっていい。なんと、筒井康隆31歳のときの作品である。
中高生向けに書かれただけあって、平易すぎるくらい平易な表現が使われている。今でいうラノベのようなものなのかもしれないが、表現はとても上品である。
アニメ版を見てからこれを読むと、ひどくあっさりした印象を受ける。
この小説を読む限りでは、半世紀にわたって映像化され続けるほどのものすごい名作とも思えない。
さすがに昭和感が強く、現在の感覚からするとありえない表現も散見される。
特に、女性の話し言葉に違和感を感じる。当時の女子中高生は、本当にこんな話し方をしていたのだろうか?
また、「男は男らしく、女は女らしく」というジェンダー・ロールがことさらに強調されている気がする。当時としては、むしろそれこそが教育的配慮だったのかもしれない。
一方、放課後の理科室の怪しげな雰囲気とか、掃除時間のけだるさとか、半世紀経っても学校という場は案外変わっていないのかも、とも思う。そのことが、この作品に時代を超えた普遍性をもたせているのかもしれない。
本書には、「時をかける少女」に加えて、少年少女向けの作品がもう2つ収録されている。どちらも表題作と同じくらい面白い。(18/08/09読了 18/10/27更新)