黒い同盟 米国、サウジアラビア、イスラエル 宮田律 平凡社新書 ★★★☆☆
「黒い同盟」とはなかなか挑発的なタイトルだ。宗教的にはまったく相容れないはずのアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの三国は、「反イラン」を軸に「悪の枢軸」を形成している。
本書では特に、サウジアラビア政府の腐敗っぷりが描かれている。
サウジアラビアは、国家としての体をなしていない「ならずもの国家」(rogue state)だ。その腹黒さは、王政に批判的なサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏をトルコの領事館で殺害し、死体をバラバラにして酸で溶かしたという猟奇的事件によって世界に印象づけられた。
この国は、民主主義からはもっとも遠いところにいる。
にもかかわらず、アメリカが表立って批判しないのは、サウジアラビアのオイル・マネーがアメリカの軍需産業にジャブジャブ流れているからだ。サウジアラビアは、アメリカにとって最大の武器輸出国であり、アメリカ、中国に次ぐ世界三位の軍事大国なのだ。
サウジアラビアのオイル・マネーをアメリカの軍需産業に結びつけ、その仲介料で莫大な富を得たのが、殺害されたカショギ氏の叔父にあたるアドナン・カショギだった。
サウジアラビアが購入した武器は、イエメンへの無差別爆撃に使われている。世界からはほとんど見捨てられているが、1500万人以上もの人が深刻な食糧不足、水不足にあるという。
サウジアラビアの初代国王、アブドゥルアズィーズ・イブン・サウードには45人の息子がいた。現国王のサルマン国王は25番目の息子だが、高齢で認知症を患っている。実権を握っているのは、初代国王の孫にあたる、若きムハンマド皇太子である。
王朝は三代目で堕落するというが、このあたり、北朝鮮とそっくりではないか。ムハンマド皇太子は金正恩の一つ年下で、年齢もほとんど同じである。
メッカ、メディナというイスラームの2大聖地がサウジアラビア国内にあるというのは、なんという皮肉だろうか。(19/10/20読了 20/03/14更新)