犬であるとはどういうことか アレクサンドラ・ホロウィッツ 白揚社 ★★★★☆
私は犬が嫌いである。犬よりも断然、猫派だ。
そんな私が、「コロナ探知犬」について書かなくてはならなくなった。そのネタを仕込むために、この本を読んだ。
筆者は米国コロンビア大学で犬の認知行動学を研究する研究者だが、本書はなかなかに文学的である。犬の嗅覚に関するサイエンスを期待していたが、そういった知識はそれほど得られない。紙面の多くは自らの嗅覚体験─ニューヨークでの「スメル・マッピング」、ロックフェラー大学のLeslie Vosshallラボでの被験者体験、マサチューセッツの森でのアニマル・トラッキング─について割かれている。むしろルポルタージュと言うべきかもしれない。
興味深いのは、麻薬探知犬のような、人間のために働く犬をどうやって訓練するかというくだりだった。
犬が麻薬の匂いを嗅ぎ分けられるのはわかる。問題は、犬がどうやって、「麻薬の匂いを探知することが自分の使命だ」と理解できるのか、ということだ。
そうした犬たちは、決して奴隷のように人間にこき使われているのではない。そうではなくて、それこそが犬本来の姿なのである。
犬は嗅ぐこと自体が大好きなのだ。家でペットとして溺愛されている犬のほうが、むしろ不幸なのかもしれない。
ラストはちょっと感動的。
これまでの人生ではあまり犬と接触してこなかったが、犬に対して少し興味が湧いてきた。(20/12/01読了 21/01/22更新)