読書日記 2023年

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スターリンの正体 ★★★☆☆ 舛添要一 小学館新書

元祖「国際政治学者」、舛添要一がこんな本を書いているとは。『ヒトラーの正体』、『ムッソリーニの正体』とならぶ独裁者三部作の一つ。
「朝まで生テレビ」に出ていた頃の舌鋒鋭い論調を期待したが、あまりキレのある文章ではなかった。語尾が単調なデスマス体で、幼稚な文体。
でも、知らないことばかりで、勉強になった。ヒトラーは600万人のユダヤ人を殺害したが、スターリンは1000〜2000万人を虐殺したというから、その残虐さは群を抜く。

ソ連が英米と組み、結果的に戦勝国になれたのは、ドイツという共通の敵がいたためだ。
ソ連は独ソ戦に勝利したものの、第二次大戦における戦死者は軍人・民間人合わせて2700万人というから唖然とする(ドイツは900万人、日本は310万人)。いかに人命が軽視されているかがわかる。

三大独裁者の中で、スターリンが他の二人と決定的に違うのは、スターリンが戦勝国側の人間だということだ。
第二次大戦末期において、ムッソリーニは処刑され、ヒトラーは自殺した。しかし、スターリンは戦後1953年まで生き、狂気の独裁者として君臨し続けた。
スターリンはロシア革命で失われた領土を奪還したから、かつてのロシア帝国の栄光を取り戻したという一面もある。しかし、国内でこれほど自国民を虐殺しておきながら、未だにスターリンが英雄として礼賛されるというのは、ロシアという国はまったく理解を超えている。
でも、スターリンはグルジア人なのだ。一体、グルジアにおけるスターリンの評価はどのようなものなのだろうか。(23/03/04読了 23/03/05更新)

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