読書日記 2023年

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20ヵ国語ペラペラ ★★★★★ 種田輝豊 ちくま文庫

いやー面白かった!一気に読んでしまった。まだ世の中に、こんなに楽しい本があったとは。
今この本が復刊された理由は不明だが、本書が出版されたのはなんと1969年、半世紀以上も昔の物語なのだ。

安っぽいタイトルだが、タイトルに偽りナシ、なのである。
筆者は、「20ヵ国語ペラペラ」どころではない。そのすべての言語で、プロとして翻訳や通訳を行っているのだ。いやはや、世の中にはすごい人がいたものだ。
到底真似できそうにないが、やる気がフツフツと湧いてこようというものだ。

著者は1938年生まれ。終戦直後の語学の学習環境―特に英語以外の言語―は、現在とは比べ物にならないほど劣悪だった。
驚くべきは、著者が、この極東の日本の中でも最果ての地、網走で育ったということだ。なにしろ、英語スピーチコンテストに出場するために、汽車に12時間も揺られて札幌まで行かなければならないのだから。

著者はまず、手に入った語学書を片っ端から暗記していく。
インターネットはおろかCDもなかった時代に、どうやって発音を習得するのか?
ある言語を母語とする宣教師がどこかにいると聞きつければ、テープレコーダーを担いで出掛けて行く。そして、昔話などを録音してもらって、それを擦り切れるほど聞く。
あるいは、自作のラジオからかすかに聞こえてくる、何語かすら判然としない外国語の放送に耳を傾ける。大使館に連絡して話者を探してもらい、ペンパルとして文通する――。
一体、この情熱はどこから湧き上がってくるのだろう。

高校生のとき、札幌での一次試験と東京での最終試験を勝ち抜き、日本代表の交換留学生としてアメリカに派遣されることになる。横浜からシアトルまで、船(氷川丸)で2週間もかかった時代だ。
そして、アメリカの学校ですら「語学気違い」の名を恣にし、フランス語の授業ではクラスのトップに上り詰めるのだ。

現代の学習環境がいかに恵まれていることか。それでも一向に上達しないのは、単なる甘えに過ぎないことを思い知らされる。
筆者の勉強法こそが、語学の真髄なのかもしれない。語学に王道なし、なのである。
今こそ読むべき、実に痛快な、すべての悩める語学学習者に贈るバイブル。(23/04/15読了 23/06/04更新)

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