読書日記 2008年

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物語 カタルーニャの歴史 田澤耕 中公新書 ★★★☆☆

かつてカタルーニャは、地中海の覇者であった。ギリシャも、イタリア南部も、シチリア島も、サルディーニャ島も、カタルーニャ・アラゴン連合王国の版図だった。しかし、私が高校時代に使った世界史の教科書には、「カタルーニャ」の文字は一度も現れない。

本書は、『物語 スペインの歴史』に輪をかけてバランスが悪い。なにしろ、近世以降の500年間が短い一章に押し込められてしまっているのだ。
1492年というのはスペイン史にとって画期的な年である。すなわち、カスティーリャ王女イザベルとカタルーニャ・アラゴン連合王国の王子フェルナンド(カタルーニャ語ではファラン)の婚姻により強大になったスペイン王国が、グラナダを陥落させてレコンキスタを完了させるとともに、イザベルの援助を受けたコロンブス(コロン)が新大陸を「発見」した年である。
しかし、スペインの栄光の始まりは、カタルーニャの凋落の始まりであった。歴史というものは、常に相対的なのである。
時代は下って、1588年、スペインの「無敵艦隊」がイギリスに敗れ、スペインの凋落が始まる。その後(1668年)、ポルトガルは首尾よく独立を勝ち取るが、カタルーニャはしくじった。それで、未だにスペインの一地方(とフランスのごく一部)に甘んじているのである。

6月にバルセロナに行くのだ。本書を読まなければ、バルセロナはスペインの一都市だ、という認識のままであっただろう。(08/04/23 読了)

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