いのちと放射能 柳澤桂子 ちくま文庫 ★★☆☆☆
中学生に放射能の話をしなければならないことになったので、読んでみた。本書は、1988年、チェルノブイリの事故の2年後に出版された。あれほど悲惨な事故があったにもかかわらず、当時の日本に、反原発を唱える人がほどんどいなかったのは驚くべきことだ。人間というものは、よほどひどい目に遭わないと反省しない生き物らしい。
この本はしかし、一体誰に向けて書かれているのだろうか。子供向けのようでありながら、被曝量と発癌率についてのくだりは非常に分かりにくい。宗教じみていて、自分が子供の頃に読んだらきっと反発を覚えただろう。この時代に反原発を唱えたことの勇気と先見性は賞賛すべきものだが、残念ながら、説得力のある議論には思えなかった。(11/11/23読了)