読書日記 2019年

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平成史 保阪正康 平凡社新書 ★★★☆☆

元号の区切りなどまったくの偶然で決まっているのだから、もとより「平成時代」を特徴づけるものなど存在しない。ただ、30年の間に色んな事件が起きただけである。
それでも、元号は一世代に対応しているから、「時代」と呼ぶに相応しいタイムスパンをもっている。

大部分の人にとって平成は、端から端までリアルタイムで体験した唯一の時代である。だから、各個人の「平成史」がある。その中で、何を重要と見なすかは人によって違うだろう。

本書も、ひどく個人的な「平成史」に思える。
「激動の昭和」に比していえば、「停滞の平成」と言えるかもしれない。しかし、バブル崩壊とか、経済の失速とか、日本の凋落とかいった話題は、本書ではほとんど触れられていない。

1995年(平成7年)は象徴的な年だった。1月に阪神淡路大震災が起き、3月に地下鉄サリン事件が起きた。個人的な体験として、確かに、その年の世紀末感はすごかった。
著者は、その前年の自社さ連立政権の成立が、もう一つの象徴と見る。すなわち、五五年体制が崩壊し、政治の虚構が露わになり、小選挙区制が導入され、政治の劣化が進むことになると。なるほど、あまりそういう視点で考えたことはなかった。
でも、では昭和時代の政治家がそんなに素晴らしかったかというと、そんなこともないだろう。むしろもっと腹黒かったような気がする。

1995年はまた、「インターネット元年」とも言われる。しかし、80歳の著者には興味ない話題らしく、この点についてもほとんど言及されていない。
平成元年は、偶然にも、ベルリンの壁が崩壊し、ソ連崩壊へとつながっていく歴史的な年だった。(天安門事件も同じ年に起きたが、こちらは何も変えなかった。)
それがやがて911へとつながっていくことになるのであるが、そういった世界情勢の変化についても触れられていない。
「平成史」というにはちょっと物足りない気がした。(19/11/03読了 19/11/13更新)

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