読書日記 2021年

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サイゴンから来た妻と娘 ★★★★☆ 近藤紘一 文春文庫

サイゴンのいちばん長い日』の続編みたいな本。
どうやったらこんなに巧い文章が書けるのか・・・と思うほどの、圧倒的な筆力。とても面白い。
ただ、南ベトナム脱出前の話については、前著とかなり重複がある。

新聞社のサイゴン特派員だった著者は、友人に誘われた一種の「合コン」で年齢不詳のベトナム女性と出会い、なぜか結婚することになってしまう。
本書の中心は、妻となったベトナム女性(作品中には名前が出てこない)と、思春期まっただ中の連れ子・ユンとの、東京でのハチャメチャな生活ぶりである。
とりわけ印象的なのが、妻の娘に対する教育法である。現在の感覚では「虐待」と言われてしまうのだろうけど、実に大らかで、底抜けに明るい。こういう教育法は、よほど自分の芯がしっかりしていないとできないだろう。

なんと濃密な人生だろう、と思って著者の年譜を調べてみると、1986年に45歳の若さで夭逝していた。妻にエネルギーを吸い取られてしまったのだろうか・・・。
バンコク編、パリ編と一家の冒険は続くので、そちらも併せて読んでみたい。(21/08/12読了 21/08/15更新)

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