読書日記 2009年

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論文の書き方 清水幾太郎 岩波新書 ★★☆☆☆

「論文の書き方」というけれど、要は文章読本である。
書物を読み、その内容を自分の精神に刻みつけておく一つの方法は、読んで理解した内容を自分の手で表現すること、すなわち、読んだことを書くということである。「書くことを通して、私たちは本当に読むことが出来る」という初めの章の主張には大いに納得した。しかしながら、中盤はどうも論点がハッキリせず、頭に残らなかった。

本書が書かれたのは、今からちょうど半世紀前のことである。
清水少年が十一歳の時に書いたという美文、「恰(あたか)もよし、轟々、黒煙を吐いて来たれる上り列車に投じて東京へ向かいぬ。」今どきこんな文章を書くヤツがいよう筈もない。もっともこれは、著者が旧時代の文章の見本として挙げたものである。
しかし、著者が当時の常識に則ってさらりと書いたつもりでいても、現代から見ると強い違和感を感じる部分もある。

  • 「ほほえましい」や「土骨性」のような流行語(P.48)
  • 日本のように、「何分にも、私は野人ですから・・・。」と平気で名乗ったり(P.106)
  • 最近、「疎外」という言葉が流行していて、何でも自分の気に入らないものを「疎外」と名づけるようになっている(P.154)
  • こういうのを読むと、意外に言葉は時代とともにぶれる、ということに気付かされる。なにせ、当時はテレビ(という言葉はなく、「テレヴィジョン」と呼ばれていた)が出現したばかりであり、テレヴィジョンの時代にどうやって文章が生き残っていくか、なんてことが議論されているのだから。
    従って本書には、残念ながら、現在我々が文章を書く上で参考になることはほとんど書かれていない。

    しかし、それでもなお、岩波新書の青版には永年の風雪に耐えてきた貫禄があるので、個人的には好きである。(09/02/01 読了)

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