戦後史 中村政則 岩波新書 ★★★☆☆
2005年、戦後60年の節目の年に出版された本。
僅か300ページ足らずに60年の歴史を詰め込んだので、もの凄い勢いで時代が流れる。個々のトピックが一冊の本になる内容を含んでいるので、物足りない面もあるが、全体像を俯瞰するには良い。
ただ、90年以降の記述は、まだ歴史になり切っていないからか、あまり纏まりがない。
本書では、戦後史を4つの時代に分けている:
1. 敗戦と占領、朝鮮戦争、サンフランシスコ講和条約・日米安保条約(1945~1960年)
2. 高度経済成長、ベトナム戦争の時代(1960~1973年)
3. 第一次石油危機〜冷戦体制の終焉、バブル崩壊(1973~1990年)
4. 湾岸戦争〜9・11同時多発テロ、イラク戦争(1990年~現在)
現代は時代の変化が速くなったというけれど、実は、敗戦から高度成長にかけての方が、遙かにダイナミックに時代は変化したのかもしれない。とはいえ、自分が生きていない時代の気分を感じることはなかなか難しい。
1991年のソ連崩壊、冷戦体制の終焉をもって20世紀システムは終わり、21世紀システムに移行したという。しかし、日本の「戦後」は依然として終わっていない。国際政治における対米従属的な姿勢が変わらない限り、また、アジアに対する過去の清算が終わらない限り、日本の戦後は終わらない。
私は、いま日本には「戦後」の終わらせ方について、対抗的な二つの道があると考える。ひとことで言えば、「戦争への道」か、「平和への道」かという、対立・選択である。この問題に最終決着をつけるのが、憲法改正問題である。この問題で過ちをおかせば、この先、50〜100年の日本の未来を拘束することになろう。戦後60年にして、いまわれわれは戦後最大の岐路に立っている。
(09/02/24 読了)