山の遭難 羽根田治 平凡社新書 ★★★☆☆
登山は、リスクを伴う危険な行為である。遭難のことばかり考えていたら山になんか行けないが、山には入る前には、自分の心に驕りがないか、今一度思いを巡らせてみるのがいいだろう。また、遭難して奇跡の生還を果たした人の記録を読むことは、遭難事故のリアリティを感じる上で有益だし、万一自分が本当に遭難してしまった場合にきっと役立つはずである。
遭難事故のケース・スタディをライフワークとする著者であるが、本書は、近年増殖中の呆れた登山者に対する怒りの書になっている。タクシー代わりに救急車を呼ぶ人が問題になっているが、タクシー代わりにヘリでの救助を要請する人もいるという。しかし、ヘリコプターによる山岳救助は、実は命懸けなのだ。最近は、度重なる不祥事で警察官のイメージもあまり良くないが、死と隣り合わせの山岳救助隊員の活動には本当に頭が下がる。(10/02/02読了)