読書日記 2010年

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乳と卵 川上未映子 文春文庫 ★★★★☆

大阪ことばで綴られる、うねりながら流れてゆく文体。それでいて現代的な言い回しも鏤められていて、実に斬新。純文学の大いなる可能性を予感させる、芥川賞の名に恥じない前衛的な作品である。巧い。

母一人娘一人の母子家庭の姉が豊胸手術を受けるために大阪から上京してきて、独身である<わたし>の家で夏の三日間を過ごす。登場人物は3人の女だけであり、ときおり物言わぬ娘の視点を借りながら、けったいな女の身体について語られる。この「場末の大阪感」が独特の文体とマッチして絶妙である。

しかしながらこの、おまけのように収録されている『あなたたちの恋愛は瀕死』という小品、これはもうブッ飛びすぎていて、著者の感性にはとてもついていけないのであった。(10/10/22読了)

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