勝手にふるえてろ 綿矢りさ 文藝春秋 ★★☆☆☆
<とどきますか、とどきません。光りかがやく手に入らないものばかり見つめているせいで、すでに手に入れたものたちは足元に転がるたくさんの屍になってライトさえ当たらず、私に踏まれてかかとの形にへこんでいるのです。>
推敲を重ねた跡が窺われる、綿矢りさワールド全開なこの書き出しは悪くない。
が・・・残念ながら、どう転んでも、秀逸とは言い難い作品である。
いかにも素人っぽいのだ。ストーリーはベタでチープな少女漫画のようであり、それでいて「イチ」のどこに魅力があるのかが伝わってこない。キラリと光る言語表現はあまり見あたらず、印象に残らない。一瞬で読めてしまうが、それは単に薄っぺらいからだ。
あまりにも若くして芥川賞を受賞し、作品よりも作者が注目されすぎてしまった不幸な著書が、これからどうやって新境地を開いていくことができるのか。それが気になって読んではみたものの、いつもガッカリさせられる。綿矢りさの小説は、そういう宿命を背負っているのかもしれない。処女作の『インストール』は確かに面白かったけどね。(10/10/15読了)