秘密 東野圭吾 文春文庫 ★★★★☆
何度か映画化されたりドラマ化されたりしているらしい(見たことはない)が、原作は1988年で結構古い。娘が父親の目を盗んでボーイフレンドに電話するという舞台装置は、昭和的でもはやノスタルジックでさえある。
とはいえ古臭さはまったく感じず、テンポよく一気に読み切ってしまう。綺麗にまとまっていて、確かに名作だと思う。ラストシーンにはちょっとホロリとさせられた。
でも、私は主人公の平介と年が近いにもかかわらず、あまり感情移入できなかった。藻奈美の身体を借りた直子に対する平介の行動には、共感できない。こんな、絵に描いたように幸せな家族って実在するんだろうか。現実世界の家族の方が、もっとずっと切ないのではないだろうか?
タイトルの「秘密」の中身については、肩すかしを食った感じ。もともとの設定自体が荒唐無稽なので、ここだけリアリティを求められても・・・と思ってしまう。(10/10/29読了)