読書日記 2015年

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香と日本人 稲坂良弘 角川文庫 ★★★★☆

日本独特の香文化について、多方面からコンパクトに解説してあって、大変勉強になった。
著者は元は脚本家だったが、香道を海外に紹介するイベントを手がけたことをきっかけにして、40代にして香文化の専門家に転身したという。

そもそも日本では、沈香や白檀などの香木や、麝香などの天然香料は採取できない。
『日本書紀』によれば、聖徳太子の時代(推古三年、595年)、淡路島に一本の香木が漂着してきたという。日本の香文化の歴史は、このときに始まる。
奈良時代において仏教とともに用いられていた香は、平安時代に入ると、貴族たちの間で「薫物」(たきもの)という形で花開く。『源氏物語』はまさに、香の物語である。

時代が下って武家の世になると、武家たちは香木そのものを愛で、蒐集するようになる。香木の「目利き」が現れ、香木を持ち寄って優劣を競うちに、ゲーム性が取り入れられていく。そこに文学的な素養も加えられ、やがて「香道」という形に結晶してゆく。
「組香」の最高傑作は、源氏物語五十四帖の世界を、5種類の香木の組み合わせに見事に対応させた「源氏香」であろう。源氏香が完成したのは江戸時代であるが、そこには美しい数学的構造が潜んでいて、和算の発展も関係しているというのは興味深い。

これを機に源氏物語の現代語訳を読んでみようかとも思ったが、私はあまり情緒的な人間ではないので、果たして楽しめるのかどうか・・・。 (15/03/31読了 15/04/05更新)

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