読書日記 2016年

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日本語という外国語 荒川洋平 講談社現代新書 ★★★☆☆

読者として、日本人だけでなく、日本語や日本語教育に興味のある外国人も想定しているのか、驚くほど平易な日本語で書かれている。しかし、だからといって内容のレベルが低いわけではない。

最近は、コンビニの店員など、日本語を話す外国人を見かけることも珍しくなくなった。では、日本語は、難しい言語だろうか?
よく言われるように、まず表記が非常に複雑である。そして、敬語などの待遇表現(相手をどう扱うかという仕組み)が発達している。第三に、これはやや意外だが、他の言語に比べて語彙数が多い。読み書きにおいては、中級レベル以降に膨大な数の単語を覚え込まなければならないそうだ。
一方、日本語の易しい点としては、まず音の数が少ないことが挙げられる。それから、これは日本語の母語話者はあまり意識していないが、動詞の活用がシンプルである。
そのようなわけで、話し言葉に関しては、特に「です・ます」形を使っている限り、日本語は案外易しい言語だといえそうだ。

日本語教育においては、形容詞には「イ形容詞」と「ナ形容詞」がある、と教える。「ナ形容詞」は、中学校で習った国文法(橋本文法)において「形容動詞」と呼ばれていたものだ。なぜそんな謎品詞が存在するのだろうと常々思っていたが、そもそもそんなものは必要なかったのだ。
「N1はN2です」「N1がN2です」の違いの説明はなるほどと思った(前者はN2が新情報、後者はN1が新情報)。「た」は過去というテンス(時制)を表すだけでなく、完了というアスペクト(相)、「重ね合わせ」というムード(法)にも関わっている。また、「ている」に多義性があるなどということも、日本語の母語話者には気付きにくいことだ。

日本語を全く知らない、様々な国から来た生徒たちに、日本語だけを使って授業をするという話は、我々が外国語を学ぶ上でも大いに参考になりそうだ。(16/07/05読了 16/11/23更新)

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