ライオンはとてつもなく不味い 山形豪 集英社新書 ★★★☆☆
アフリカで動物写真を撮ろうとしたら、まずはセレンゲティ国立公園などを擁する、アフリカ東部のサバンナを思い浮かべるであろう。しかし、著者のフィールドは、ナミビア、ボツワナ、南アフリカなどのアフリカ大陸南端の国々である。
著者は、少年時代を、ブルキナファソやトーゴといったアフリカ西部で野生動物とともに過ごしたという。そういう特異な体験がなければ、なかなかアフリカをフィールドにしようとは思わないだろう。
ブラック・アフリカはディープ過ぎて、一介の旅人が、おいそれとその懐深くに分け入ってゆけるようなところではない。治安や衛生面の問題もさることながら、アフリカ大陸には人類の負の歴史が凝縮しているようで、押しつぶされそうになる。
だがその中でもアフリカ大陸南端は、比較的旅人に優しいのかもしれない。乾燥していて気候も良さそうだ。だからこそ、白人の侵略を招いたのだが。ドラケンスバーグ山脈には、3000mを超す山々もある。
カラハリ砂漠にはコイサンの人たちが住んでいるし、ナミビア北西部には、赤茶色の岩石を砕いた粉末をバターと混ぜて肌に塗る、ヒンバの人たちもいる。だが、世界中のあらゆる場所で進行していることだが、そういった先住民たちの未来に、一筋の希望も見出すことはできない。
タイトルが秀逸。ライオンは、とてつもなく不味いらしい。(17/04/16読了 17/05/12更新)