ガロア理論「超」入門 小林吹代 技術評論社 ★☆☆☆☆
まず、文章が幼稚。「〜のです」のくり返しがイラッと来る。
一見してインテリジェンスが感じられない造作の本だが、それでも、見かけによらず高度な内容を含んでいることを期待して読み進めた。でも残念ながら、全般的に冗長かつ散漫だった。
終盤で、5次の交代群 A5 が単純群であることの説明を試みている。しかし、そもそもガロア群とは何かという説明もないし、ガロア群が与えられたときに「正規部分群からなる組成列に対応する剰余群がすべて巡回群ならば可解」なのはなぜかという説明もないので、ナンセンスだ。
数学というものは、いくら言葉を尽くしたところで、数学の言葉(つまり、定義・定理・証明)で語らない限り、決して理解できないのだと思った。こんなのを読む暇があったら、教科書をひもといて、証明の一つでもノートに書き写したほうがはるかに有益だろう。
でも、少しだけ得たものがあった──3次方程式(カルダーノの公式)と4次方程式の解の公式(フェラリの公式)は、それぞれ
a3 + b3 + c3 - 3abc = (a + b + c)(a + ωb + ω2c)(a + ω2b + ωc)
a4 + b4 + c4 - 2(a2b2 + a2c2 + a2d2 + b2c2 + b2d2 + c2d2) + 8abcd = (a + b + c + d)(a - b - c + d)(a - b + c - d)(a + b - c - d)
という恒等式からダイレクトに導かれるのだ。確かに、左辺も右辺もそれらしい形をしている。(17/04/21読了 17/04/26更新)