寝るまえ5分の外国語 黒田龍之介 白水社 ★★★☆☆
「なんで語学書の書評はないの?」という素朴な疑問から始まった企画。
白水社の企画なので、取り上げてある本のほとんどが白水社なのは致し方ない。でも、語学書の名著は他にもあるはずなので、出版社によらずお薦めの語学書を紹介して欲しかった。(最終章に、申し訳程度に他社の本が紹介してあるが。)
語学といえば白水社、なのだが、それにしても、現役の本だけでもこんなにたくさんあるとは驚きだ。
白水社から最初の語学書が出版されたのは1918年というから、今からちょうど100年前のことだ。
最初に出版された語学書の一冊に『実習仏蘭西文典』がある。著者はなんと、『星の王子さま』の翻訳者、内藤濯である!
本書に収められた書評は、玉石混淆である。
著者の専門とするスラブ語や、著者が若いころ必死に勉強したドイツ語やフランス語に関しては、語学教師ならではの視点で書かれていて、とても面白い。特に第3章は白眉で、古い語学書なんてなんの価値もないと思っていたけど、こんな楽しみ方もあるのかと感心した。
その一方で、アジアやアフリカなど、印欧語以外の言語に関しては、ひどく薄っぺらい印象を受ける。言語によって、著者の思い入れの深さが違い過ぎるのだ。
言語学者でも、自分の専門以外の言語のことはこんなに知らないのか・・・とびっくりしてしまう。やはり、「餅は餅屋」なのだ、と思った。
それに、語学書の書評をするのなら、パラパラめくって「風を通す」だけでなく、そのテキストを使ってその言語を勉強してからでないとだめなのではないだろうか。
著者は、スペイン語も勉強したことがないらしい。個人的なイチオシは、瓜生良平『スペイン語の入門』(白水社)なのだが、本書には出てこない。
この本の書評を読んで、その語学書を手に取ってみようと思うかどうかは微妙だ。
でも、この本を読んでいると、「ニューエクスプレス」シリーズであらゆる言語を勉強したいという気持ちがフツフツと湧き起こってくる。だとすれば、この企画は成功だったといえるのかもしれない。(18/07/04読了 18/10/27更新)