書くための文章読本 瀬戸賢一 集英社インターナショナル新書 ★★★★☆
日本語の文章を書く人であれば、誰もが頭を悩ます「文末問題」。どの語尾を採用するかは校正の段階まで悩み続けるが、最後は流れの良さそうなものをえいやっと選ぶ・・・ものだと思っていた。
日本語の文末が単調になりがちなことは「文豪」と呼ばれる人たちも指摘していたけれど、本書は丸ごと一冊この「文末問題」に当てられている。
過去形「た」「た」「た」・・・の中に、現在形を差し挟むのは有効である。ただそれは、文末問題を解決するのみならず、視点の置き所を変えることなのだ。なるほど。
踊る文末。文末の単調さから逃れるためのテクニックは多々ある。現在形に加えて、終助詞、否定、疑問、倒置、体言止め、などなど。こんなこと、考えたこともなかったなぁ。
敬体(デスマス体)は、とりわけ文章の巧拙が反映しやすいような気がする。下手な書き手だと、たちまち小学生の作文みたいになってしまう。
本書は、敬体で書かれているにもかかわらず文章の流れが実にスムーズで、まさしくその内容の見事な実践になっている。(20/04/10読了 20/04/16更新)