謎の独立国家ソマリランド 高野秀行 集英社文庫 ★★★★☆
これはすごい。著者渾身の大作。おちゃらけた紀行文かと思いきや、骨太のノン・フィクションなのだ。
電話帳のように分厚いが、とても読み易い。ただ、流石に長すぎるような・・・。中盤の氏族の話が冗長で飽きてくる。ラストはほのぼのとした読後感に包まれる。
数字の「7」の形をした、「アフリカの角」ソマリア。
ソマリアと言えば「海賊」のイメージしかなかったが、本書を読めば、ソマリアとソマリ人について詳しくなること請け合いだ。
ソマリ人居住地は、本書のメインテーマ、地上のラピュタ・ソマリランドに加え、海賊国家・ブントランド、リアル北斗の拳・南部ソマリア、それにエチオピアのソマリ州、ケニア東部、ジブチに分断されている。
ソマリ語はアフロ・アジア語族に属し、アラビア語とは遠い親戚に当たる。アラビア半島にもほど近く、ソマリ人はわれわれがイメージするバンツー系の「アフリカ人」とは一線を画する。
著者がすごいのは、ソマリ語を少々嗜むことに加え、夜な夜な地元民と一緒にカート(khat)を齧りながらヨタ話に興じるところである。
カートというのはアフリカチャノキ(Catha edulis)の葉で、アンフェタミンに似た物質が含まれているいう。つまり覚醒剤である。危ねぇなぁ。
東南アジアでは現地人が檳榔(ビンロウ)の葉を噛み続けているが、どうもそういうレベルではなさそうだ。
ソマリア最高峰・シンビリス山(2460m)は、ソマリランドの領内にあって、登りに行ける・・・というのは良いニュース。(20/07/08読了 21/02/22更新)