アフリカ・レポート ★★★★☆ 松本仁一 岩波新書
ジンバブエといえは、「100兆ジンバブエ・ドル紙幣」が存在するという、冗談のような超ハイパーインフレで有名だ。それもこれも、すべてはムガベ元大統領の独裁による失政によるものだ。
しかし驚くべきことに、かつてのジンバブエは、広大な農場の広がる豊かな国だったという。1980年のジンバブエ(旧ローデシア)独立は、「最も恵まれた独立」とさえ呼ばれていたのだ。
1960年代は「アフリカの時代」と呼ばれ、アフリカ諸国は次々と植民地からの独立を果たした。資源に恵まれたアフリカは、ヨーロッパによる搾取から脱しさえすれば、豊かになることが約束されているはずだった。
ところが、現実はどうだろう。独立闘争の志士たちは、権力の座に着くや独裁者となり、国民のことなぞ一顧だにしない。いくら先進国が金銭的な援助をしたところで、政府が私腹を肥やすばかりで貧しい国民には行き渡らないから、まったく始末に悪い。
だが、諸悪の根源は白人による植民地支配であることを忘れてはならない。
きまぐれに引かれた国境線のために、国内には諸民族がモザイク状に居住し、国家に対する帰属意識が薄い。だから政府は、自らの部族の利益ばかりを優先することになる。
しかしそれは、支配する白人が、反乱を起こさせないように意図的にそうしたものなのだ。
となると、全てを「ガラガラポン」して国境線を引き直すところからやり直さないと、世界は平和にならないことになる。ヨーロッパ人による植民地支配とは、かくも罪深いのだ。
どうしてこんな、希望のない世界になってしまったのだろう。これが、私たちが子供の頃に思い描いていた21世紀だろうか?
本書の最後に、ほんの少しだけ希望を感じさせる話も出てくる。でも、そこから得られる教訓は「国家を信用せず、自分たちでやるしかない」ということだから、やっぱり救いはない。
なお、ムガベは2019年に軍部のクーデターにより失脚し、現在ではジンバブエの治安は比較的安定しているようだ。これは良い話である。(24/06/24読了 24/11/01更新)