読書日記 2024年

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日本人のためのアフリカ入門 ★★★☆☆ 白戸圭一 ちくま新書

アフリカと一言で言っても、(サハラ以北のアラブ諸国を除いたとしても)東アフリカ、西アフリカ、南アフリカでは文化的にも遺伝的にも言語的にもまったく異なる。本来、「アフリカ」という言葉で一括りにするには無理があるほどの多様性を包含しているのだ。
にもかかわらず、こういうタイトルの本が成立してしまうこと自体が、我々のアフリカに対する無知を表している。

私が子供の頃、アフリカのイメージといえば、まさに「飢餓と貧困」だった。
栄養失調で肋が浮き出て下腹部が膨れ、目もうつろな子供たちの写真を嫌というほど見せられた。そのステレオタイプな負のイメージを日本人に刷り込んだのは、まぎれもなくマスメディアである。
でも、今はインターネットがあって、現地の情報に直接アクセスすることができる。今や、アフリカは必ずしも憐憫の対象でもないと思うのだが、どうだろう。

日本が金持ちだった1990年代(1991年から2000年まで)、実に10年連続で、日本は世界一のODA(政府開発援助)拠出国だったという。私たちの税金がアフリカにジャブジャブ注ぎ込まれたが、そのカネはどこかに消えてしまい、アフリカは決して発展することはなかった。
それに反して、中国はアフリカをビジネスの場としてとらえた。中国とアフリカの経済的結びつきが深まるのと並行してアフリカは目覚ましい経済成長を遂げ、中国のプレゼンスは増すばかりである。なんという皮肉だろうか。

しかも日本は、国連において、(中国の横槍もあって)大票田であるアフリカ票の取りまとめに失敗し、常任理事国入りという千載一遇のチャンスを逃した。今後、国際社会における日本の相対的な地位は低下するばかりであり、金輪際、二度とこのようなチャンスは巡ってこないかもしれない。(24/11/03読了 24/11/05更新)

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