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1.カジランガ国立公園 編
旅の始まりは、風邪の引き始めだった。
エアアジアXの機内は狭かった。何度座り直しても、身体のどこかがぶつかった。
サービスは最悪である。水すらも買えない。いや、お金を払えば買えるのだが、支払いがタイバーツでなければならないのだ。これからタイを旅する人なら、それもいいだろう。でも、トランジットだけが目的でバンコクに行く人は、タイバーツなんぞもっていない。円や米ドルも使えるが、お釣りはバーツで支払われるから、小額紙幣がないと何も買えないことになる。
フライト代が安いことが唯一のメリットであるはずだが、実際のところ、それほど安いわけでもない。至るところに落とし穴があって、乗客の弱みにつけ込んでカネを巻き上げようと手ぐすね引いているのだ。
機内は寒かった。悪寒が止まらない。上着は全部、スーツケースの中に入れてしまった。毛布を借りるのに、なんと6ドルもかかるという!
機内ですっかり風邪が悪化し、バンコクの空港に着いた頃には発熱していた。
空港の薬局でタイレノールという解熱剤を買う。これはよく効いた。しかし、しばらくするとまた熱が上がってくる。
バンコクの空港で4時間ほど待たされ、再びエアアジアXに乗る。コルカタの空港に着いたときには、夜中の2時を回っていた。
早速、悪名高きコルカタの空港タクシーにボッタクられる。ホテルまで10分足らずの距離なのに、590ルピー(940円)などとふっかけてくる。日本より高いじゃねえか!
でも、面倒なので言われるままに支払う。ここは、無事にホテルに着きさえすればいい・・・。
翌朝、気合いで起き上がり、再び空港へ。
IndiGo というドメスティックな飛行機に乗って、ナガランド州・ディマプールの小さな空港に着く。飛行機を3回乗り継いで、25時間かけてここまでやってきた。
相変わらず、熱は下がらない。
この日は、ホームステイ先でのんびりするはずだった。しかし、謎の政治的理由により、12月30日に突如として道路が閉鎖されることになったという。そこで、道路が閉鎖される前に戻ってくるために、空港から直接カジランガ国立公園へ向かわなければならなくなった。
カジランガ国立公園までの道のりは果てしなく長かった。ほぼ未舗装の道路を6時間ほどもシェイクされ続け、脳ミソが溶け出してしまったかのようだった。まさに拷問である。
夜、ヘロヘロになってホテルに到着。なにも食べずにベッドに直行する。
翌朝、4時に叩き起こされる。寒い。頭がフラフラする。
朦朧とする意識の中で、ゾウの背中に乗ったらしい。
やがて陽が昇り、周囲には幻想的な光景が広がった。野生のサイが現れた!振り落とされないように必死にしがみつきながら、シャッターを切った。
インドサイ(Rhinoceros unicornis)はその角に薬効があると信じられ、密猟によって個体数が激減してしまった。もはや、地球上に2500頭ほどしか生息していない。その大部分が、ここカジランガ国立公園にいるのだ。
エレファント・サファリを無事に終えて、ホテルに戻る。チェックアウトの12時まで、昏々と眠る。
それから、車で数分のところにある Kaziranga National Orchid and Biodiversity Park というアトラクションへ向かう。ここには、インド北東部に自生する数百種類ものランが蒐集された温室や、アッサム州の少数民族に関する民俗博物館もある。見学していくうち、少しずつ復活の兆しが見えてきた。
お祭りの時に披露される、カルビの伝統的なバンブー・ダンスを見られたのは良かった。これから、カルビの国に向かうのだ。
(つづく)